2020年7月から始まったサミティヴェート病院の「子どもなんでも相談」。毎日、たくさんの質問をいただき、ありがとうございます!お寄せいただいた悩みを拝見していると、その多くがタイで子育てするママを悩ませる共通のものと思いました。
そこで、これまでにいただいた質問とそれに対する病院からの回答を定期的にご紹介していきます。ママの安心に少しでもつながればスタッフ一同とても嬉しく思います。
「子どもなんでも相談」で、いただいた質問で最も多かったのが「タイの予防接種と日本のやり方との違いに戸惑う」「コロナ禍で一時帰国できないため、日本で打つ予定だった予防接種(またはスケジュール)をどうしたらいいの?!」というものでした。
その中から今回はMMR(麻疹・風疹・おたふくかぜ)について具体的にご紹介します。
1歳時におたふくかぜと麻疹・風疹混合ワクチンを受けられた後、2回目が未接種ということですね。いずれのワクチンも標準接種年齢は日本では4~6歳です。なぜ、この時期かを以下に説明します。
実は1回目の接種で免疫を獲得するお子さんは平均して97%です。全員に免疫がつくわけではないのです。また、接種1年後に約1割のお子さんでおたふくかぜの免疫が著しく低下します。それでも、保育園や幼稚園といった集団を守る免疫としては十分効果があります。そして、4~6歳で2回目を接種すると、1回目で不十分な免疫でしかなかったお子さんを含めてほぼ全員が強い免疫を獲得するので、小学校以降成人期にわたって社会全体が守られるというわけです。
一方、2回目の接種を11~12歳で行った研究があって、約15%で麻疹の免疫が不十分だったという結果を受けて、2回目の接種は遅れないほうが良いという考え方になっています。実際過去に日本で1回しか接種していなかった中高大学生に麻疹が大流行したことがあります。
麻疹の何が怖いかと言いますと、まれではありますが脳炎になってしまうからです。
タイや東南アジア諸国は日本より麻疹の流行が多いですし、空港を通過するだけでも感染リスクが高くなりますので、今のうちに接種しておいたほうが良いのではないでしょうか。
タイではMMRの1回目を1歳で接種した後、2歳半~6歳という幅で2回目を打ちますが、日本は4~6歳と少し遅めの設定となっています。この違いはおそらく日本では日本脳炎を3~4歳で打っていること、麻疹の目立った流行がないことから急がなくてもよいという考えが背景にあります。
そもそもなぜ2回目の接種が必要なのかと言いますと、以前は病気自体が流行していたので、1回打っておけばその後の流行にさらされることによって抵抗力がその都度強化されていたので追加の必要がなかったのですが、現在のように麻疹の流行がなくなったことによって、予防接種以外に免疫を強化することができないので、二度三度と繰り返して接種する必要があるのです。ですので、1回目の抵抗力が消えてしまう前に2回目を接種する必要があり、日本では遅くとも小学校入学前にという推奨が出ているのです。
ということで、どちらの先生も間違ったことは言っていないのですが、タイは日本より麻疹にかかるリスクが高い国ですので、5歳までには2回目を接種されるのがよいと思います。
タイで使用されているMMRワクチンはPriorixという名前で、グラクソスミスクラインというベルギーやアメリカなどの欧米諸国でも認可されているものです。微熱など副反応が出る率が5~7%といわれている日本のMR(麻疹・風疹)ワクチンより、Priorixの副反応は数字上、むしろ低いとされています。
MMRワクチンやインフルエンザワクチンは鶏卵の中でウイルスを増殖させて生産されることから、理論上、卵アレルギーのある方でアナフィラキシーを起こしかねないという懸念があり、小児科医やアレルギー専門医たちによって長く注意喚起と接種保留という指導がなされてきました。
しかし、実際に接種してみてもアナフィラキシーはまず起こらず、起こったとしてもそれは残留物である抗生物質が原因であったことがわかってきましたので、現在では普通に接種してもよいという流れに各国なっていると思います。どうぞ安心して接種してください。
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