Shift!ライターの吉田はシニア世代のど真ん中。「脳のトラブルは年齢に関係ない」とはいわれるが、やはり年齢的にもとっても気になるところ。そこでMRI、MRA、頸動脈超音波ドップラー検査、経頭蓋超音波ドップラー検査を受診。初めてなので正直のところ怖かったけど、受けておけば安心だ。ここでは、その一部始終をレポートしたい。
サミティベート病院の日本人窓口で受付を済ませ、必要書類に記入後、検査着へと着替える。ロッカールームの静けさの中、袖を通すと「いよいよ始まる」という実感がじわじわと迫ってくる。普段は気にならない着替えの一枚も、今日はスイッチを切り替える儀式のよう。時計やネックレスなどの金属はすべて外してロッカーの中へ。MRIに入るのは初めてで、期待と不安が半分ずつ胸に混ざり合った気分だった。

検査室に足を踏み入れると、美しい女性技師が英語で丁寧に流れを説明してくれる。「1時間、寝台の上で身じろぎもしないでください」という言葉に思わず身体がこわばる。耳栓とノイズキャンセリングヘッドホンで音の世界は閉ざされ、頭部は器具で固定、顔にはマスク。圧迫感に思わず目を閉じたそのとき、技師が僕の掌に緊急ボタンを渡しながら、なんと日本語で「頑張って!」と一言。その優しい声が張り詰めた気持ちをほんの少し和らげてくれた。

寝台がゆっくりとブラックホールに吸い込まれるように機械の奥へ。やがてヘッドホンから小さな日本語アナウンスが流れる。「次のスキャンは○分ほどです」。突然、金属が打ち鳴らされるような騒音とともに検査がスタート。ノイズキャンセリングヘッドホンをしているにもかかわらず、まるで工事現場にいるような音が聞こえる。「ガッタンガッタン」という機械音と高音のノイズが混じり合う音を聞きながら、自分の脳が輪切りにされていく映像が頭の中に浮かんでしまった。最初の数十秒が緊張のピークだった。
所要時間:約1時間弱

MRIの重厚さに比べれば、超音波ドップラーはずっと気楽だ。とはいえ、首の頚動脈に器具をぐっと押し当てられると、血流の音が聞こえてくるようで妙に生々しい。ラジオの雑音のような音とともに頭蓋骨のすき間から頭の奥も覗かれて「実況中継」されているかのよう。「これが動脈硬化を探す検査か」と納得しつつも、体内を透視されるような不思議な体験だった。
所要時間:頸動脈 約15分 / 経頭蓋 約15分

検査の締めくくりは、巨大モニターに映し出された自分の脳とのご対面だ。輪切りになった映像は、どこか芸術的ですらある。医師から「美しい脳ですね」と告げられ、胸の奥がふっとゆるんだ。腫瘍も血栓もなく、頸動脈の外側にわずかな脂肪が見える程度。「年に一度、この検査を続けていれば安心です」と穏やかに告げられ、未来への小さな処方箋を受け取った気分になった。

MRIのドームに入るときの恐怖は、今も鮮明に残っている。輪切りにされるような不安は決して快いものではないが、美人技師の気遣いに支えられて最後まで乗り切れた。閉所恐怖症の人には少しハードルが高いかもしれないが、乗り越えた先には“自分の脳の真実”が待っている。費用は確かに安くない。それでも、脳は人生の司令塔だ。嗜好品を控えてでも、この検査を定期的に受けたい ── そう思わせるほど、濃密な体験だった。

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