タレントの堀ちえみさんが、2015年に国の指定難病「特発性大腿(だいたい)骨頭壊死(えし)症」を患っていたことを2018年5月に明かしました。2018年4月には、俳優の坂口憲二さんもこの病気の治療に専念するため芸能活動を無期限休止する、と大きく報道されたばかりです。
この難病はどのような病気なのでしょうか。サミティヴェート病院スクムビットで同難病と診断され、2018年に両脚の手術を受けた元久 存(もとひさ めぐむ)さんが体験談を寄せて下さいました。
診てもらったウィチアン先生は、問診して、前の週に脚の痛みで来院した時に撮影していたレントゲンを見た後に、
「30,000バーツかかるけどMRIの撮影をしましょう」と言いました。
正直、MRIするほどか!?と思いました。が、後から思えばあれは先生が、
この病気だとほぼアタリをつけていて、診断を確定させるために撮影したんだな、と。
日本では国指定の難病で罹患者数も少ない病気なのに、
タイのこの病院の先生方はよく勉強されていて知識も経験もすごいんだなー、と思いました。
そして、「両側性の特発性大腿骨頭壊死症」と診断されました。
約1ヶ月後、仕事への影響が最小限な年末年始に右脚を手術。
すねの骨を数センチ採取し、壊死した大腿骨に埋め込む手術法でした。
しかも先生は外来を終えた夜8時から朝5時までの9時間の徹夜での大手術!整形外科医の世界は職人の世界だと思いました。
手術後は、外科専用の病棟に10泊入院。初日こそ両腕に点滴を付けていましたが、3日目からは点滴も外れました。
僕はタイへは単身赴任です。
家に帰っても片足じゃ不便ですから、美人のナースが頻繁に看護・介助してくれて食事も出る病院に泊まるのは楽で良かったです。
4日目からはリハビリテーション部の理学療法士が病室まで毎日来てくれ、
入院中の身体が鈍らないように上半身の運動の指導をしてくれました。
ベッドから下りられるようになると、歩行器(車輪がついた補助具)を使って病棟の廊下を何度も行ったり来たり。
手術してない片足と、手の力だけで進むのがとても大変でしたが理学療法士から厳しく指導されました。
右脚の術後経過は順調で、4月のソンクラン休暇に予定通り反対側の左脚の手術を実施。
今回も18時から朝2時までの夜の手術で無事終了。
執刀医からは「先に手術した右脚はリハビリ不要!今回は左脚を手術したから、回復中の右脚を使わざるを得ないからね」と言われました。
無駄がない、これまた職人です。
坂口憲二さんは、まず診断がつくまでに2,3年かかったとも聞きました。こちらではその診断がすぐについたのでまずそこが違う。
手術の方法も僕は自分の骨を患部に移植するので安心でしたし、術後の回復も早い。
何よりも、片脚1回ずつの手術でOKということで安心できます。
ここの整形外科は経験豊富な医師がいるんだと実感しています。
また、手術をするまでのスピードがすごい。実は、診断されたその日に手術するか、とも言われていたんです。
さすがに仕事の都合があるので無理でしたが(笑)、それから数週間後の年末年始休暇、そして3ヶ月半後のソンクラン休暇、
と僕の都合に合わせて手術してもらえたのも助かりました。
日本だったら何しろ国指定の難病ですから、執刀する医者を探して手術するまでにどれだけ時間がかかることか…。
タイ赴任中に発症し、不幸中の幸いだったとつくづく思っています。
しばらくは車椅子、慣れたら松葉づえの生活ですが、
ウィチアン先生からは「年末にはゴルフができるでしょう」と言われていますので、楽しみにしています。
家族は病院近くのホテルに宿泊して毎日お見舞いのために来院。
病院敷地内にある日系定食屋、大戸屋から個室までのデリバリーなどもあり、
病室で家族みんなで食事をしたりして過ごしました。
また、入院最後の二日は病室に補助ベッドを入れてもらって家族で一緒に病院に宿泊しました。
ところで、私には二種類の抗生剤に対してのアレルギーがあります。
この病気には私がアレルギーのあるその抗生剤を使うのが一般的のようですが、
私には使うことができませんでしたので、菌を培養して私が使える抗生剤がその菌に効くか試してから投与してくださいました。
その結果、日に日に体調は回復し、当初の予定よりは二日程延びての退院となりましたが、
ミャンマーでの医療の不安から、ちゃんとバンコクで完治してからミャンマーに帰りたかったので、
むしろしっかり治療していただけて良かったです。
退院の際には主人の勤め先から加入していた保険が問題なくキャッシュレスで使え、支払いに関しても安心でした。
合計6日間のバンコクでの入院生活でしたが、
サミティヴェート病院は日本人患者に対して非常に理解のある病院だと実感しました。
私達家族にとっても過ごしやすい空間で、私もストレスなく治療を受けることができ本当に感謝しています。
お世話になりました。
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サミティヴェート病院スクムビットでは近年、ミャンマーから受診する日本人患者が外来・入院とも急増しています。
そのうち2017年で入院になったケースの中には、胃腸炎や気管支炎以外でもデング熱、デング出血熱、
尿路結石、骨折、じん帯損傷、そして脳梗塞などが見られました。
日頃の体調管理はもちろんのこと、自分が、家族が、病気になったらどのように病院にかかるのか、
場合によってはどうやってタイの病院まで行くのか、子どもも含めて家族でバンコク入りする可能性があることまで含めて
シミュレーションをしておきましょう。
なお、旅行時や年次の健康診断の際にバンコクの病院で新規患者登録をし、
病院の場所やサービス内容などを確認しておくと安心です。
元久 存さん
GMO-Z com Securities (Thailand) 社長
GMOフィナンシャルホールディングス(東京都渋谷区)のタイ子会社。タイで信用取引を中心に、オンライン証券取引サービスを提供。日本人顧客にはメールで対応。[support.trade.th@z.com]
特発性大腿骨頭壊死症とは
厚生労働省の難病指定の特定疾患。大腿骨頭の一部が、血流の低下により壊死(骨が腐った状態ではなく、血が通わなくなって骨組織が死んだ状態)に陥った状態。骨壊死に陥った部分が潰れることにより、痛みが出現する。日本での1年間の新規発生数は約2,000~3,000人で、これら新患における好発年齢は、全体では30~50歳代。働き盛りの年代に好発する疾患。原因はまだ完全に解明されていない。
参照:難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/entry/160
執刀医
整形外科 ウィチアン医師
タイ整形外科学会所属
スイス、ドイツなどに留学し人工関節やスポーツ医学を修める。人工膝関節置換術(変形性膝関節症や関節リウマチなどにより変形した関節を、金属やセラミック等でできた人工膝関節と入れ替えて機能改善する手術法)に精通。タイ人はもちろんのこと外国人患者の治療も幅広く手掛ける。
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