便秘は人口の約10%が罹患する一般的な疾患で、女性は男性よりも約2倍多いと言われています。
便秘とは、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」(“便秘症”とは、便秘による症状が現れ検査や治療を必要とする場合)で、排便に影響を及ぼす不規則な状態を指します。正常な排便は、健康な人であれば1日に1~3回、少なくとも2~3日に1回はあり、胃痛や胃の不快感、ガスなどを伴うことはありません。実際、正常な排便によって排出される便は一般的に非常に柔らかく、硬すぎず、液体状でもありません。また、健康な便は、その人の食生活にもよりますが、黄色から茶色をしています。したがって、便が赤色や黒色である場合は、消化管出血が起こっていることを示すシグナルである可能性があります。さらに、水中に油状の残留物がある便は、膵臓や膀胱の問題のシグナルかもしれません。
1.不健康な生活習慣や食生活
特に、野菜や果物を十分に食べず、毎日水分を十分に摂らない人が便秘になりやすいと言われています。運動を定期的に行わないことも便秘の原因となります。
2.薬の影響
血圧を下げる薬や、胃痛の治療などに使われる鎮痛剤の一部、咳止めなどの薬のなかには、便秘を引き起こす可能性がある物もあります。カルシウム、鉄分、ビタミン、一部のミネラルなど、特定のサプリメントも便秘を引き起こす可能性があります。
これらの疾患の影響で、便秘になりやすい体質になることがあります。さらに、便秘は大腸がん発症の危険因子と考えられています。
女性は月経周期に合わせてホルモンバランスが変化し、これが便秘の原因となることがあります。生理前になると、黄体ホルモンや卵胞ホルモンが分泌されます。特に黄体ホルモンは腸の動きを鈍くするため、排卵後から生理にかけて便秘が起こりやすくなります。また、黄体ホルモンによって便に含まれる水分が腸壁から吸収されるため、便が硬くなり、排便がしづらくなることもあります。
妊娠中は、黄体ホルモンの分泌が増えるため、便秘になりやすくなります。出産後も、骨盤底筋の衰えや母乳育児による水分不足、自律神経の乱れなどが影響し、便秘が起こることがあります。出産後の約6~8週間は、腸の動きが鈍くなる傾向があるため、この期間は便秘になりやすい時期とされています。
妊娠や出産は体力を消耗するため、しっかりと体を休めて体力を回復させ、健康的な食生活を心がけることが、便秘改善には大切です。
女性は男性に比べ、排便に必要な括約筋、腹筋が弱いため、筋力が不足していると排便時に十分な腹圧をかけられずに便秘になりやすくなります。また、腹筋が低下すると腸が重力で下方に下がり、便秘になりやすくなります。特に女性は骨盤が広いので、垂れ下がりやすいです。さらに、筋力の低下は腸のぜん動運動を鈍くするため、運動不足が便秘の原因となります。高齢になると筋力がより衰える傾向があるため、便秘を改善するためには、普段から体を動かしたり筋肉を鍛えたりして、健康な体を維持することが大切です。
症状としては、腹痛、疲労感、発熱があります。
気をつけなければならないのが、脱水症状や体内のミネラルが急激に減少する場合です。これらは生命に関わりますので下痢がひどい場合には医療機関を受診しましょう。
慢性的な便秘に悩む患者は、痔や 硬くなった便が結腸潰瘍や直腸潰瘍を引き起こし、その結果、便に血が混じるなど、さまざまな合併症を引き起こしやすくなります。
さらに、便秘は甲状腺機能低下など他の身体的疾患のシグナルである可能性もあり、便秘と下痢を交互に繰り返したり、便が細くなったりする場合は、大腸がんの警告サインである可能性もあります。
さらに、便通にまつわる問題は、精神衛生に深刻な影響を与える可能性があることが※研究で示されており、便通障害(通常より便通が多いか少ないかにかかわらず)と幸福感の深刻な低下との関連性を示す研究が数多くあります。実際、便秘や下痢を引き起こす過敏性腸症候群(IBS)の患者は、うつ病や不安神経症などのメンタルヘルス障害のリスクが、一般の人々よりも高いことがわかっています。
※https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4017427/
便秘は一般的に、生活習慣の改善と下剤の服用で治療できます。
など生活習慣を改善しながら便秘の治療をおこない、症状の改善につなげます。
しかしながら、下剤を一定期間使用しても効果がない患者さんには、※直腸肛門内圧検査を実施・評価が可能な専門医に相談することをお勧めします。肛門の筋肉が弛緩すると直腸が収縮しますが、便秘の患者さんの中には、これが起こらず、肛門が締め付けられ、排便が困難になる人もいます。※直腸肛門内圧検査は短時間で痛みもありません。
※直腸肛門内圧検査・・・肛門内の圧を測定して直腸肛門部の機能を診断する検査です。肛門括約筋の力がどれくらいあるかを測定することで、排便障害の原因を調べたり、治療方針を決めるために使用されます。
また下記のような危険因子を持つ方は、大腸がんなどのより深刻な疾患の可能性があるため、医師の診察を受ける必要があります。
・体重減少
・血便
・下痢と便秘の交替
・しこりの形成などの他の症状
・大腸がんの家族歴
・50歳以降に初めて発症した便秘
バンコクにあるサミティベート病院・肝臓・消化器科では、最新の医療機器を取り入れ、肝臓や消化器に関するさまざまな症状や疾患に対して、迅速で正確な検査を行っています。
当科には、タイ国内外で豊富な経験を積んだ消化器・肝臓の専門医が在籍しており、日本人の患者さまにも安心してご相談いただける体制を整えています。わかりやすく丁寧な説明と、患者さま一人ひとりに寄り添った医療を心がけています。
尾﨑 岳 (おざき たかし) 医師
サミティベート病院 医療コーディネーティングドクター
消化器外科専門医・指導医。がん治療認定医、関西医科大学医学部非常勤講師。関西医科大学消化器外科および大阪府済生会泉尾病院を経て来タイ。当院では入院患者さんの訪室、無料の医療相談、またご希望があれば外来時の説明や手術前の相談など幅広く日本人患者をサポート。趣味はロードバイク。実用タイ語4級取得。
Anupong Tangaroonsanti 医師
SAMITIVEJ SUKHUMVIT
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