大腸がんは効果的な予防と治療で克服できる

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要点

  • 大腸癌の予防は極めて重要です。定期的な大腸内視鏡検査を行い、早期発見することにより生存率は劇的に高まります。また、検診は45歳になれば受けたほうがいいでしょう。さらに、大腸癌の家族歴のある人はもっと早めに受けたほうがいいでしょう。

  • 大腸ポリープの種類によっては、3~5年後にポリープががんに発展する可能性があります。これらのポリープを検診で見つけることができれば、がん化する前に切除することができます。

  • たとえ症状がなかっとしても、45歳以上で大腸内視鏡検査を受けた場合、大腸がんの死亡率が低下すると言われています。

  • 通常の光では認識しにくい平坦なポリープをより鮮明に映し出すナローバンドイメージング(NBI)など、現在、さまざまな大腸がん検診技術があります。早期の病変では外科的手術を必要とせず、すぐにポリープを切除することができる場合もあります。



大腸がんとは

大腸がんは、正常な大腸細胞が突然変異を起こすことによって生じる病気です。これらの細胞は、身体が制御できないほど多くなるまで分裂します。初期の段階では、(良性の)腫瘍として発生することもありますが、それを切除せずに放置しておくと、がんの発症(がん化)につながる可能性があります。

大腸がんの症状

大腸癌患者の多くは、自覚症状がなく気づかないことがあります。

症状:

  • 食習慣の変化
  • 下痢と便秘を繰り返す
  • 突然の体重減少
  • 激しい疲労
  • 血便
  • 慢性的な腹痛

大腸がんの症状は、他の消化器系の疾患と共通することが多く、他の臓器や他の疾患と誤って認識される可能性があります。上記の症状は、ステージ2から4の大腸癌を示唆している可能性があります。消化器系の不調が2週間以上続くようであれば、専門医に相談することが大切です。

大腸がんのステージ

大腸癌の発症は以下の5段階に分類される:

ステージ0:上皮内(粘膜)がん

ステージ1:腫瘍が粘膜下層・固有筋層に浸潤している。

ステージ2:固有筋層を超えて更に深く浸潤している。

ステージ3:がんの深さは関係なく、リンパ節に転移している。

ステージ4:がんが肝臓、肺、脳などの他の臓器に転移している。



大腸がんのスクリーニングと治療

当院の消化器内科医は大腸がん検診での最新の技術である、NBIAIアシストのついた大腸内視鏡を用います。AIはリアルタイムで病変の検出を行い医師の診断をサポートします。この技術は、緑や青の光線を使用することにより、ポリープの存在をより明確化し、医師に明瞭な視野を提供します。

ポリープの切除は、苦痛の少ない低侵襲手術(MIS)の一種である内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を用います。これらの技術は腹部を切開することなく、大腸や胃の大きなポリープを切除することができます。そのため、患者さんの不安の一つである傷跡が長く残ることもありません。さらに、手術に伴うリスクが軽減され、術後の回復時間(入院期間)も軽減されます。その結果、患者は速やかに回復し、より早期に日常生活に戻ることができます。それに比べ、侵襲的な手術は回復に時間がかかり、合併症のリスクも増加します。



大腸がん検査の推奨頻度

大腸内視鏡検査を受けることで、大腸がんによる死亡率が劇的に低下するという研究結果もあります。米国癌学会は、自覚症状がない場合でも、45歳以上から大腸内視鏡検査を勧めています。
大腸がんの90%は大腸の腺腫性ポリープから発見されるという興味深いデータがあります。これら、腺腫性ポリープは前がん病変とみなされ、3~5年の間にがんに発展する可能性があると言われています。
家族に大腸癌の病歴がある人は、家族が罹患した年齢から10年引いた年齢が大腸がん検診を受けた方がよい年齢となります。なぜなら、その家族は一般の人々よりもリスクが高いと考えられるので、症状の有無にかかわらず大腸内視鏡検査を始めたほうがよいでしょう。


例)父親が40歳で大腸癌に罹患した場合:
40歳-10歳=30歳
30歳から大腸内視鏡検査を始めるとよいでしょう。

現在、サミティベートで行われているポリープスクリーニング検査で発見されたポリープは、その全体の最大60%が前がん病変(癌になる手前の病変)でした。国際平均25%。医師がポリープを発見するのが早ければ早いほど、その後の治療が成功する確率が高くなります。



大腸内視鏡(大腸カメラ)

大腸内視鏡検査の流れ

大腸内視鏡検査は半日程度で終了します。

  1. まず、腸内をきれいにするため、検査の6時間前から飲食を控える。
  2. 医師が診療歴、基礎疾患、薬物アレルギーの、常用している薬の確認。
  3. 下剤を飲んで腸内をきれいにし、大腸内視鏡検査を受けられる状態にする。所要時間:2~3時間
  4. 鎮静剤の注射。ただし、患者が高齢で持病がある場合は、吸入薬の形で弱い鎮静剤を投与する。(効果発現時間が早く、覚醒も早い)
  5. 大腸内視鏡検査。所要時間:20~30分程度。切除が必要なポリープが多い場合は45~60分



大腸内視鏡検査の推奨頻度

大腸癌の90%は大腸の腺腫性ポリープの形で発見されるという興味深いデータがあるので、定期的な大腸内視鏡検査は、最も安全な選択肢です。

1cm未満のポリープが見つかった場合:

3~5年ごとに再検査を受けるようすすめられます。今後3〜5年の間にがんに発展する可能性があるからです。

1cmのポリープを発見した場合:

1~3年ごとに再検査を受けるようすすめられます。

ポリープが発見されなかった場合:

5~10年に1回検診を受けることがすすめられます

※インスリン抵抗性のある人は、検診の頻度を増やす必要があるかもしれません。※これは個人の体の状態やその他の関連する大腸癌の危険因子によって異なります。

大腸内視鏡検査は 、大腸に存在する問題の判断に役立ちます。医師が初期段階で異常を発見できれば、病気が広がる前に治療することができます。

医療技術は格段に進歩し、大腸がんを治療できるようになりましたが、予防は常に治療に勝るものです。サミティベート病院は、内視鏡手術の経験豊富な日本の佐野病院と提携し、NBI技術をタイに導入しました。NBIは、ポリープ発見の精度を平均の2倍まで向上させることができる技術です。

引き続き佐野病院やオリンパス社との医療面での提携もさらに充実させていく予定です。



この記事を書いた医師

Pathipat Durongpongkasem, M.D.

消化器内科

便秘と下痢を繰り返したり、慢性的な腹痛、突然の体重減少などが気になる方はサミティベート病院(バンコク)、消化器科を受診してください。

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https://www.samitivejhospitals.com/article/detail/colon-cancer-prevention

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