
日本では2010年より、妊婦健康診査の必須項目として全例にHTLV-1抗体検査が実施されています。当院でも妊娠中に本検査を受けていただくことをお勧めしています。
HTLV-1は、血液中のT細胞というリンパ球に感染するウイルスです。成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、HTLV-1ぶどう膜炎(HU)などの疾患を引き起こすことが知られています。
特に成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は有効な治療法がなく、発症後2年以内ほとんどの方が亡くなる予後不良な疾患のひとつです。HTLV-1キャリアの方の5%が、生涯のうちに成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)を発症すると報告されています。
日本国内のHTLV-1キャリアは約100万人で、年間4,000人以上の新規キャリアが報告されています。先進国の中で唯一、HTLV-1が蔓延している国です。
かつては九州・沖縄地方を含む南西日本に特に多く見られていましたが、人の移動に伴い現在では全国に広く分布しています。
現在、新規キャリアの多くは母子感染によるものであり、特に母乳を介した感染が主な経路と考えられています。
このため、日本では2010年より妊婦健診の必須検査項目としてHTLV-1抗体検査が導入されました。2010年の全国調査では、妊婦のスクリーニング陽性率は0.26%と報告されています。
母体がHTLV-1キャリアである場合、完全母乳育児では約20%の確率で母子感染が起こるとされています。しかし、短期間の母乳育児や人工乳(ミルク)育児を選択することで、感染リスクを低減できます。
すべての妊婦さんに検査を推奨していますが、特に以下の方は必ず受けていただくことをお勧めします。
安心して出産・育児を迎えるためにも、ぜひ本検査の実施をご検討ください。

河野 春香 医師 (サミティベート病院スクムビット)
産婦人科専門医。昭和大学病院、昭和大学横浜市北部病院、昭和大学江東豊洲病院にて周産期母子医療センターで勤務。 腹腔鏡による婦人科手術も多数執刀経験あり。2023年6月からタイ駐在に帯同。2児の母として子育てにも奮闘中。
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