
毎年、12月から1月にかけた年末年始になると思い出すことがあります。2022年のことです。初めて東北部イサーン地方のロイエットまで出かけた際、途中のブリラムやコラート(ナコーンラーチャーシーマー)で、季節外れの大雨によって洪水に飲み込まれた集落を見ました。運転していたピックアップのタイヤが半分ほど水に浸かり、まるで水路のようになった道路を走るのは少し不安でしたが、それでも初めて見聞きする光景や音を記憶に止めようと一所懸命になっていました。
そこで見たのは、集落に住む子ども達が池と化した庭先で水に浸かって遊んでいる姿でした。水面は自分の背丈ギリギリなのに、怖がったり悲しんだりするのではなく笑顔を浮かべてこちらに手を振ってくる子どももいました。なんだか強くて、ある意味において豊かだなと感じました。人が置かれる環境というものは穏やかなのが一番なのかもしれませんが、一方で何か外的要因に影響されることで人は強くなり、場合によっては豊かになったり美しくなったりするのだと思います。災いはけっして歓迎できることではないけれど、人はそれなりに乗り越えていく術をなんとかして編み出すことができるのかもしれません。
人の最たる弱さというものは自分の中にあり、それを克服するのはなかなか容易なことではないといいます。自らの弱さに気付き、それと折り合いをつけながら生きていくのはやっかいなことだけど、きっとそういったプロセスが人を魅力的にしていくのかな、なんて感じています。今年もたぶんいろいろなことがあるのでしょうが、自分らしく生きていけるように少しでも日常を創造的に過ごせたらと思っています。
おかげさまで「Shift!」も創刊2年目を迎えます。手に取って読んでいただいている方々には本当に感謝するとともに、みなさまのご健康を心から願っております。
文・吉田一紀