毎年の健康診断は、いわばカラダの“定点観測”。いまや健診は血液や尿の検査の数値を眺めるだけではありません。より精緻に、未来を見据えたチェックができる時代に進化しています。
胃カメラや大腸カメラで病気の芽を摘む、CTや脳ドックで隠れたリスクを見つける、ワクチンでこれからの自分を守る。一見「オーバーかな?」と思えるオプションも、“将来への投資”です。特に40~50代は、早めに行動することが大切。今回の特集では、健康診断の最前線をめぐりながら、自分の身体を深く知り、長く健やかに生きるためのヒントをお届けします。
胃がんや胃潰瘍は、早期に発見できるかどうかがカギ。症状がないまま進行することも多く、「まだ元気だから大丈夫」と思っている時期こそ検査のタイミング。胃カメラの強みは、その場で治療ができること。小さなポリープが見つかれば、切除まで可能です。かつて主流だったバリウム検査ではなく、より精度の高い内視鏡を選ぶ方が増えています。
バリウムでは見えませんが、胃カメラの場合は食道までが一目瞭然となります。
症状がなくても45歳になったら一度は受けておきたい検査。日本では局所麻酔で胃カメラを行う施設が多いですが、当院では鎮静剤を使用し、胃(口から)と大腸(肛門から)の両方を同時に検査できます。眠っている間に、一度の受診でしっかりとチェックできるのが大きな利点です。
日本人のがん死亡数の第2位は大腸がん*。サミティベート病院ではオリンパス社製の最新AI内視鏡を導入。AIがリアルタイムで画像を解析し、微細な病変を検出。医師の診断をサポートします。熟練医師の目と経験に、最先端テクノロジーが加わることで、より小さなポリープも高確率で発見可能。見つけたその場でポリープ切除も行えます。
*出典:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)」
医師のコメント
当院では、胃カメラ・大腸カメラともに消化器の専門医が検査を実施。
さらに、鎮静剤を使用する際には麻酔科専門医がかならず立ち会う体制を整えており、
日本ではなかなか得られない安心感の中で検査を受けていただけます。
これまで目視では見落とす可能性のあったもの、または判断しづらかった病変などをAIが即座に察知・解析!
疑わしい箇所に接近するとカメラに付いたAIが反応し、通信音と点滅で医師に知らせます。
サミティベート病院は、2014年より内視鏡の専門・佐野病院(神戸市)と提携し、医師陣の手技研修を継続的に行っています。
2024年検査実績(日本人のみ抜粋)
日本人のがん死亡数の第1位は肺がん*。肺がんは、気づいたときには進行していることが少なくありません。胸部CTは、通常の胸部X線では見つけにくい、わずか2~3mmの小さな腫瘍や肺気腫まで検出できます。国立がん研究センターでは、喫煙指数600以上*の重喫煙者で、50~74歳の方に、年1回の胸部CT検診を推奨しています。
*喫煙指数=1日の喫煙本数 × 喫煙年数
*出典:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)」
医師のコメント
輪切り画像で肺をくわしく確認できる検査です。CTこそ、肺がんの早期発見への強い味方です。
超音波を使って肝臓の硬さを測定し、脂肪肝や線維化の進行度を数値で“見える化”する検査です。従来の腹部エコーよりも精度が高く、リスクを早期に把握できます。飲酒しなくても、肥満型はもちろんやせ型でも脂肪肝になることがあります。検査は機器を横腹に1~5分当てるだけ。痛みもなく短時間で受けられる“非侵襲”の検査なので、中年期以降はぜひ追加したいオプションです。
医師のコメント
脂肪肝や肝硬変の進行度を2つの数値で提示します。飲酒習慣のある方や肥満傾向の方は特に必須ですが、すべての中年層におすすめです。腹部エコーは画像のみですが、この検査では「数値」で比較できるため、次回検査までの健康管理の励みになると患者さんから好評です。
心筋梗塞や狭心症は、ある日突然やってくるように思われがちですが、その前には「動脈硬化」という“前触れ”があります*。造影剤を使わずに撮影できるCTで、冠動脈に沈着したプラーク(動脈硬化性の沈着物)を数値化。自分の動脈硬化リスクをはっきりと知ることができます。特に40〜70歳の方やコレステロール値が高い方、また家族に心疾患の既往がある方は、一度は受けておきたい検査です。
*なお、攣縮型狭心症など、動脈硬化が原因ではない狭心症や心筋梗塞もあります。
医師のコメント
自分の血管に付着したプラークを数字や画像として“見て理解する”ことができます。この検査を受けてから生活習慣の改善や治療への姿勢が変わる方が多いのが特徴です。
年齢を重ねると、誰にでも少しずつ起こる骨の劣化。骨密度検査(X線)で骨の強さを測ることで、骨折リスクを事前に把握できます。さらに、血液検査でビタミンD濃度を調べると、カルシウムの吸収に必要なビタミンDが不足していないかも確認できます。特に女性、更年期以降、やせ型の方は注意が必要です。1年だけでなく、2~3年連続で検査することで低下傾向がわかります。自分の骨の状態を“見える化”しておくことは、これから先の人生を自分らしく歩むための大切な準備といえるでしょう。
医師のコメント
70歳以上の男性、40歳以上の女性に推奨*。検査をすると多くの方にビタミンD不足が見られます。
*公益財団法人骨粗鬆症財団
短時間でX線撮影後、医師が結果をお伝え。
『脳ドック体験記』もご覧ください。
MRIで脳梗塞や腫瘍の有無を調べ、MRAで血管の状態を詳しく調べます。動脈瘤や血管の狭窄など、将来の脳卒中やくも膜下出血につながるリスクを調べることができます。無症状のまま進む「無症候性脳梗塞」や「未破裂動脈瘤」も、脳ドックを受けることで初めて気づけることも多いのです。検査結果は「異常があるかどうか」だけでなく、「これからどう予防するか」を考えるきっかけ。生活習慣の見直しや治療の選択肢を、早い段階から自分の意思で取れることが脳ドックの大きな意義です。
医師のコメント
脳ドックは、脳腫瘍や脳梗塞などを早期発見し、治療につなげる強い味方です。結果が「異常なし」でも、それは“安心”という健康資産に。40代は2年に1回、50代は毎年の受診をおすすめします。
ワクチン接種は、大人にこそ必要です!自分自身はもちろん、周囲の大切な人を守る予防接種。うち過ぎて困るということはありません。成人がかかると重症化するものもあります。それらをしっかり把握し、対策しておくことが何より大切。サミティベート病院では各種ワクチンを取り揃え、日本人の皆様が安心してタイ生活を送れるようサポートしています。ぜひご利用ください。
日本では、検診でポリープが見つかると、後日あらためて切除するケースが多いですよね。当院では受診前の患者さんの同意があれば、検査と切除を同日に行うことができます。一度で治療まで終わるため、通院の手間が減り、体への負担も少なく済むのがメリットです。さらに内視鏡室には麻酔科医師が常駐しており、安全面でもしっかりサポートしています。
実は私自身も先日検査を受け、その場でポリープを取ってもらいましたが、一度で終わるのは本当にラクでした。また麻酔科医師がそばにいるだけで安心感が違うと実感しました。
工場や建設現場で働く方には、現場ならではの健康管理が求められます。当院では、一般的な健康診断に加えて、次のような検査にも対応しています。「閉鎖空間(コンファインドスペース)作業診断書」「高所作業診断書」「アスベスト(石綿)」「騒音などに関わる検査」――これらは業務特有のリスクに応じた検査です。
そして、私はこのたび日本で「産業医」の資格を取得しました。日本の制度に基づく資格ではありますが、その知識と経験を生かし、タイで働く皆さんの健康管理や職場環境づくりをサポートしていきます。現場での安全対策や、働きやすい環境づくりについても、必要に応じてご相談いただけるかと思います。
サミティベート病院医師 尾﨑 岳
医療相談:火・木・土 9時〜15時/無料(要予約)
本誌ライターの吉田はシニア世代のど真ん中。「脳のトラブルは年齢に関係ない」とはいわれるが、やはり年齢的にもとっても気になるところ。そこでMRI、MRA、頸動脈超音波ドップラー検査、経頭蓋超音波ドップラー検査を受診。初めてなので正直のところ怖かったけど、受けておけば安心だ。ここでは、その一部始終をレポートしたい。
サミティベート病院の日本人窓口で受付を済ませ、必要書類に記入後、検査着へと着替える。ロッカールームの静けさの中、袖を通すと「いよいよ始まる」という実感がじわじわと迫ってくる。普段は気にならない着替えの一枚も、今日はスイッチを切り替える儀式のよう。時計やネックレスなどの金属はすべて外してロッカーの中へ。MRIに入るのは初めてで、期待と不安が半分ずつ胸に混ざり合った気分だった。
検査室に足を踏み入れると、美しい女性技師が英語で丁寧に流れを説明してくれる。「1時間、寝台の上で身じろぎもしないでください」という言葉に思わず身体がこわばる。耳栓とノイズキャンセリングヘッドホンで音の世界は閉ざされ、頭部は器具で固定、顔にはマスク。圧迫感に思わず目を閉じたそのとき、技師が僕の掌に緊急ボタンを渡しながら、なんと日本語で「頑張って!」と一言。その優しい声が張り詰めた気持ちをほんの少し和らげてくれた。
寝台がゆっくりとブラックホールに吸い込まれるように機械の奥へ。やがてヘッドホンから小さな日本語アナウンスが流れる。「次のスキャンは○分ほどです」。突然、金属が打ち鳴らされるような騒音とともに検査がスタート。ノイズキャンセリングヘッドホンをしているにもかかわらず、まるで工事現場にいるような音が聞こえる。「ガッタンガッタン」という機械音と高音のノイズが混じり合う音を聞きながら、自分の脳が輪切りにされていく映像が頭の中に浮かんでしまった。最初の数十秒が緊張のピークだった。
所要時間:約1時間弱
MRIの重厚さに比べれば、超音波ドップラーはずっと気楽だ。とはいえ、首の頚動脈に器具をぐっと押し当てられると、血流の音が聞こえてくるようで妙に生々しい。ラジオの雑音のような音とともに頭蓋骨のすき間から頭の奥も覗かれて「実況中継」されているかのよう。「これが動脈硬化を探す検査か」と納得しつつも、体内を透視されるような不思議な体験だった。
所要時間:頸動脈 約15分 / 経頭蓋 約15分
検査の締めくくりは、巨大モニターに映し出された自分の脳とのご対面だ。輪切りになった映像は、どこか芸術的ですらある。医師から「美しい脳ですね」と告げられ、胸の奥がふっとゆるんだ。腫瘍も血栓もなく、頸動脈の外側にわずかな脂肪が見える程度。「年に一度、この検査を続けていれば安心です」と穏やかに告げられ、未来への小さな処方箋を受け取った気分になった。
MRIのドームに入るときの恐怖は、今も鮮明に残っている。輪切りにされるような不安は決して快いものではないが、美人技師の気遣いに支えられて最後まで乗り切れた。閉所恐怖症の人には少しハードルが高いかもしれないが、乗り越えた先には“自分の脳の真実”が待っている。費用は確かに安くない。それでも、脳は人生の司令塔だ。嗜好品を控えてでも、この検査を定期的に受けたい ── そう思わせるほど、濃密な体験だった。