何か物事に対して、あるいは誰かに対して不信や怒りを覚えたとき、あなたならどうしますか。 不信や怒りにはさまざまな種類があり、それに対する反応も人それぞれ。
僕の場合、子どもの頃からそうした感情に直球で返すことが苦手で、いつの間にか不信や怒りが蓄積し、どこかで爆発してしまうことが多々ありました。 部活などでも無理やり価値観を共有しようとするのが下手で、心が腐りかけたこともあります。
でも、年齢を重ねるにつれて、そういったことへの耐性が少しずつついてきて、人の気持ちが以前よりもわかるようになった気がします。 あまり意識的ではないのですが、とにかく一度受け入れて、何かのタイミングで改めて考えてみることができるようになりました。
いずれにせよ、日常生活なんてトライアンドエラーの連続だと思っています。 特にタイに住むようになってからは、ルールや常識も日本とは異なるし、人間関係もドラスティックに変化したこともあって、場合によっては自分自身を見つめ直し、変えることも必要だと感じています。
“男の生き方”なんて、若い頃には恥ずかしくて口に出せなかった言葉ですが、いい歳になってきた今日この頃、時々無意識のうちに口にしている自分がいて、「なるほどなぁ」と、不思議な気分になることがあります。
女優の樹木希林さんがその著書『一切なりゆき』の中で、 「おごらず、他人(ひと)とは比べず、面白がって、平気に生きればいい」 という言葉を残しています。 本のタイトルも含めて、ビジネス系の自己啓発本が毛嫌いしそうな言葉ですが、僕はこの言葉がとても好きで、時々思い出すようにしています。
怒りや不信など、心に引っかかる問題を一発で解決する**“気の利いた魔法のような答え”**なんて、なかなか見つかるものではありません。 果たして魔法の答えは、空から降ってくるのか。
僕は、空からは降ってこないと思います。 だからこそ、男はやはり思いやりを持って、努力して答えを見つけなければならない。 少ししんどいときもありますが、それを乗り越えれば、きっと小さな幸せが見つかると信じています。
文・吉田一紀