
タイで起業する日本人は多いが、誰もが自分のイメージ通りにそれをできるかといえばそうではない。事業を成功へと導くためのプロセスにはもちろんハードルがあり、そこには挑戦した人にしかわからない苦労や経験があるものだ。
タイで環境とリサイクル分野における事業を展開する杉山淳さんも、タイで自ら会社を立ち上げた起業家の一人。大学では体育会野球部のキャプテンとして活躍。卒業後には三菱商事に入社し、いすゞ事業本部でタイにおけるマーケティングなどを担当していた。入社4年目にはタイ語研修生としてチェンマイ大学に留学。「これが私のタイとの最初の接点でした。1年間の留学を終えてタイ語をそこそこ使えるようになったタイミングでタイの子会社へ出向しました」。杉山さんはその子会社で3年間働いたのだが、経験を積むと同時に仕事そのものに疑問を持ち始めたのだという。
「日本を代表する大企業にいて諸条件は恵まれていたのですが、巨大な組織の中で埋もれているような気がしたんです。やりたいことがあっても、やりきることができない。自分としては、やるからには一生をかけて関わることを見つけて、何か意味のある足跡を人生に残したかったんです」。杉山さんは会社を辞めるかどうかを悩み、精神的にもかなり厳しい状態に。鬱になりつつあると感じ、サミティベート病院の心療内科に相談したこともあるそうだ。

杉山さんは2014年、三菱商事を退職。まずは家業を継承した。その間に香港でMBAを取得しながら、ASEANでの起業を見越して各国での市場調査を進めた。「そのまま家業を続けるという選択肢もあったのですが、やはりチャレンジしたかったんですね。それでASEAN諸国を回ってみて導き出した結論が、環境・リサイクル事業を東南アジアで行うのであればタイが最適だということでした」。
そして2016年、杉山さんはついにタイでの起業を実現。現在のSun-up Corporation (Thailand) Limitedを設立した。「チェンマイに留学していた際、スモールビジネスに取組む数多くのタイ人とのNGOでの出会いや学びが、私のアントレプレナーシップの原点かもしれません。若造の私を受け入れてくれたタイ社会に事業を通じて恩返ししたいですね」。杉山さんは必死に働いたという。自らの限界まで営業まわりを続け、その甲斐あって現在は3社を運営するに至っている。
そんなハードな日々を過ごしている杉山さんに、日常の健康管理についてうかがってみた。「週末は必ずジムで鍛えるようにしています。ベンチプレスやランニングマシーンに没頭することで、頭の中を整えることができるんです。自分にとっては欠かすことのできない時間です」。今日もどこかで“自分の足跡”を創造し続けている杉山さん。大きな声でエールを送りたくなるような人である。

Sun-up Corporation(Thailand)Limited.
CEO
1983年、茨城県生まれ。2006年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。同年、三菱商事・いすゞ事業本部入社。2010年から1年間、タイ語研修生としてチェンマイ大学で学ぶ。2011年にはタイの現地法人に出向。2014年に三菱商事を退社して家業を継承する。2016年、香港中文大学MBA卒業。そして2017年にタイで起業。NEDO「脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業実証要件適合性等調査・実証設計採択」。現在はSun-up Corporationをはじめ3つの会社を運営する。趣味は読書。