文:南 宏尚(みなみ ひろたか)
悪い親でいたいと思う人はいないと思うのですが、結果的にとても悪い父親になってしまう可能性が高い間違いが2つあります。
まず一つ目は、「威厳のある父親になろうとする」です。
職場で威厳のある人を演じることはあるいは可能かもしれません。しかし、家庭では、約束は破り、時々嘘をつき、言行不一致なのに堂々としているなんて無理です。子どもはそんなこととっくにわかっているのです。
わたしの幼少期、ちょうど前の大阪万博で盛り上がっていた頃、威厳のある頑固親父が理想であるように描かれたドラマが人気でしたが、そういった偏った理想像がいまだに父親としての価値観に刷り込まれているように思います。逆にその揺り戻しのような友だち親子が、子どもの成熟を阻む要素として現代は問題になっていたりします。
2つ目の決定的な間違いは「母親をないがしろにする」です。
そもそも話を聞かないというのは論外として、例えば母親が何か心配している時に共感を示さず、たいしたことはないだろうと反応するとか、意見が対立した時に自分の価値観にこだわり、時には馬鹿にしたりして母親の意見を封殺するとかです。
残念ながら子どもは母親と一体から始まりますので本質的に父親の味方ではありません。母親があなたに好意的であるからこそ、子どももあなたの言うことを聞いてくれるのであり、疲れた体で子どもと遊んだりおもちゃを買ってあげたりしても、そのことを母親が喜んでいるから子どもは喜んでくれるのです。
つまり、「仕事が大変で子どもと関わる時間が十分に取れない」は全然問題はないのです。とりあえず子どもは全無視でも構わないので、無い力を振り絞り、嘘でもいいので母親を大事にしてみてください。
見違えるように子どもが生き生きし、しっかりとした反抗期を経て大人になってくれるでしょう。
南 宏尚(みなみ ひろたか)
大阪の高槻病院で長年小児・新生児医療の第一人者として臨床・研究・教育に携わる。
サミティベート病院では医療相談やセミナーで邦人社会をサポート。
現在は出張ベースで相談やセミナーを継続中。
齢50にして長年の不摂生を猛反省、健康的生活に目覚めるも、しばしばリバウンドや激しすぎる運動で体を壊しがち。