タイでは雨季に感染症が流行する傾向があります。なかでも「レプトスピラ症(ワイル病)」は、ネズミやイヌ・ブタなどの保菌動物が尿と共に排出する細菌で汚染された水や土壌を介して、皮膚や口から感染する病気です。
日本では衛生環境の改善によりほぼ撲滅されていますが、タイでは毎年数千人規模の患者が報告されており、死亡例もあります。
症状は38~40℃の高熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、目の充血などで、潜伏期間は5〜14日です。軽症の場合は風邪のような症状で済みますが、黄疸や出血、腎不全などを伴って重症化すると死に至るケースもあります。治療にはペニシリンなどの抗菌薬が用いられます。
タイの雨季には短時間のスコール後に、道路や住宅街が一気に冠水します。特にスクムビットなどの都市部でも、ネズミやイヌの尿で汚染された水や土壌は感染リスクを高めます。水に浸かった所を歩く際に脚に傷や発疹があると、細菌の侵入を許す可能性が高くなります。
万が一、冠水エリアを通らざるを得ない場合は、長靴を履いたり、傷口を防水タイプの絆創膏で保護するなどして、濡れないようにしてください。また、川や湖での水遊びやトライアスロン、河渡りのような活動をするときも細心の注意が必要です。
冠水した道路を歩いたり、自然の中でのウォータースポーツを楽しんだ後には、必ず石鹸と温かいシャワーで洗浄してください。万が一、高熱、目の充血、悪寒や筋肉痛などの症状が現れた場合は、速やかに医師に相談することをおすすめします。タイで暮らしている人は、レプトスピラ症の基本的な知識と予防策(防水対策、早期受診)を日常生活に取り入れることが大切です。