医食同源という言葉を聞いたことがあるだろうか。広辞苑によると「病気を治すのも食事をするのも、生命を養い健康を保つためで、その本質は同じだということ」とある。古くから中国にある薬食同源という考え方をもとに、1970年代に日本で生まれた和製造語だとされている。このような食の考え方を踏襲し、味噌などの発酵食品を中心にタイでも健康食の雄として知られているのが「MarukomeThailand」だ。同社の代表である伏見和彦さんは、タイにおける発酵食品の水先案内の先陣をきって走っている人なのである。
「大学受験に失敗して浪人中に出会ったのがマルコメだったんです。入社当初は健康食を売っていることなど意識せずに、とにかくがむしゃらに仕事をしました」。そう話す伏見さんは、2004年に同社が打ち出した海外事業プロジェクトのメンバーに抜擢された。
「最初は2007年から4年間、米国のロサンゼルスに赴任したのですが、それがきっかけで自分が扱っていた味噌などの発酵食品の素晴らしさを再認識しました。当初は味噌そのものが認知されませんでしたが、3年も経つと味噌の食品としての素晴らしさが米国社会にどんどん広がっていったのには驚きました」。
伏見さんが米国から日本へ戻ったのが2011年。待っていたのは、本格的な海外進出を実現させるために現地法人を立ち上げるというミッションだった。それは中国と韓国、そしてタイで同時に現地法人を設立するというかなりハードな使命。2013年のことだった。「タイの場合はすでに小さなメーカーが味噌を現地生産していましたし、なによりもローカルのスーパーの店頭にも味噌が並んでいて、しっかりとニーズがあることに感心しました」。
そして、伏見さんは2024年にMarukomeThailandの代表に就任。タイのマーケットにおいて営業で長きに渡り培ってきた手腕を発揮することになる。
「社員のモチベーションを上げるには、味噌を始めとした発酵食品の知識を彼らにもっと知ってもらう必要がありました」。 自分たちが販売する製品が自国民の健康に貢献できることを改めて認識すると、タイ人のスタッフの士気がみるみるうちに上がっていったという。
そんな伏見さんにご自分の健康管理について聞くとこう話してくれた。「毎週末に3時間ほどジムで体を動かしています。コンドミニアムだと機材が足りないので、駅そばの専門のジムで汗を流しています。そしてとにかく歩くことにしています。あと、食事は自炊がメイン。鶏胸肉を使った料理が好きで、そこに野菜を加えて味噌仕立ての鍋のようなものにして食べることが多いです」。
鍋料理のいいところは作るのが簡単で、無理なく野菜を摂れることだという。
「食と健康は太いパイプで繋がっています。ですから、弊社が今推しているのが糀。糀そのものが独り歩きするほど認知され始めているので、今後がとても楽しみです」。
医食同源。伏見さんはこの言葉がとても似合う人なのである。
MARUKOME (THAILAND) CO., LTD. Managing Director
1984年、マルコメ株式会社に入社。営業部門に勤務していたが、2004年に同社の海外事業に携わるようになる。
2007年マルコメUSAの法人設立と共にロサンゼルスに駐在。以降4年半を米国で過ごす。
2011年から2023年までは海外事業本部に所属。
2024年マルコメタイランドの社長に就任。日本本社の海外事業本部本部長(常務執行役員)を兼任。
趣味は筋トレ、へら釣り。