
雄(オス)であれ。ーああ、なんという時代錯誤も甚だしい言葉だろう。多様性からイノベーションが生まれる時代、ジェンダーレスが推進されてゆく世界。この令和8年に、そんなことは百も承知なのだが、いい歳になってきた我々の人生に、いま最も必要なのが「男らしさ」であるような気がしてならない。「今どき、男らしさなんて求められない」という巷の声も聞こえてきそうだが、やっぱりそろそろ、年齢に相応しい落ち着きを持ちながら、周囲への気配りにも長けた、“めっちゃ頼れる人”にならなきゃいけないと思うのだ。統率と責任、育成と信頼、家庭と安定…。あなたの日々に「男らしさ」は足りているだろうか。オラついたりギラギラすることとは違う、清く正しく美しいオ・ト・コ・ラ・シ・サについて、いくつかのキーワードを追いながら考えてみたい。
「男はタフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない」。いま、どれだけの人がこの言葉を知っているだろうか。古典のハードボイルド小説の主人公、私立探偵フィリップ・マーロウのセリフだ。物語の中でヒロインの美女がマーロウに問う。「あなたは何故そんなにタフなの?」その質問に彼が返したのが冒頭の台詞である。キザだ。実にクサイ。しかし、昭和の一時期もてはやされたこの言葉には、いまだって我々を唸らせる本質があるように思う。
タフであること。それは強靭な精神力を備えているということ。決して気の強さではなく、状況に応じて感情をコントロールし、目標に向かって行動し続ける能力をいう。長い人生、何事もなく生きていくなんて無理だ。生きれば生きるほど、目指せば目指すほど、困難は目の前に立ちはだかる。そんな時に自分を守ってくれるのが、己の精神力(強い意志と折れない根気)である。「自分を守る」と述べたが、まさしくそれだ。精神力によって自分の前向きな姿勢が維持され、冷静さが保たれ、物事が継続していくのだから。現代社会では、肉体的な強さよりも、心の粘り強さが試される場面が多い。目に見える敵よりも、目に見えない不安の方が手ごわい。情報があふれ、比較され、評価され続ける世界では、誰もが知らぬ間に心を消耗している。時代は変われど、やはり自分を守る力=強靭な精神力は不可欠であろう。
では、精神力を鍛えるためにはどうすべきか? それについては世の中の有識者たちが言っている。「自分に自信を持て」と。たとえば散歩や学習といった朝の習慣。そんなことでも根気よく続けていけば自己肯定感は高まる。小さな目標を達成し続けることによってメンタルが安定し、自分に自信が生まれるのだ。自分の人生を自分の目標に向かって進むためには、やっぱり「タフでなければ生きていけない」わけだ。
とはいえ、冒頭で紹介したフィリップ・マーロウの台詞には続きがある。「優しくなければ生きている資格がない」。そう、自分軸は大事だが、他者の気持ちに寄り添うことができなければ、己の強さも独りよがりになる。本当に強い人は、どこまでも優しいということだ。
日々の小さな達成感で、自己肯定感を高めよう。

肉食男子が求められない時代とはいえ、男に「逞しさ」が不要になったわけではないだろう。重い荷物をひょいっと持ち、華麗にハンドルをさばき、物が壊れたら修繕し、休日は子供たちと走り回る…。やっぱり、そんなパパは逞しくて素敵だ。そしていつでも溌剌としていたら、奥さん的には申し分ない。
人間は生き物である以上、すべての活動の土台には肉体がある。だから健康には留意したい。よく動き、よく眠り、しっかり回復する。日々の生活にエネルギーを巡らせ、必要なときに力を出せる状態を保つことが大切だ。体力のある人は自然と行動量が増える。行動が増えれば経験が増え、経験が自身の判断力を養っていく。このように、身体能力とは人生の可能性を広げる力であることを覚えておきたい。
動物の世界は極めてシンプル。速く走れるか、長く戦えるか、いかに早く回復できるか。生き残るための能力が、そのまま生命力を左右する。人間社会はより複雑だが、根底にある仕組みはそれほど変わらない。粘り強く働ける身体、困難な状況でも踏ん張れる身体。そうした基礎体力こそ、その人の底力だ。
もちろん若さだけで身体能力が決まるとは限らない。年齢を重ねても軽やかに動く人もいれば、若くてもすぐに疲れてしまう人もいる。その差を生むのが、ずばり日々の習慣である。歩くこと、鍛えること、整えること。体を放置せず、きちんと手入れする。今日からでも始めようじゃないか。
まだ右も左もわからぬ幼少期、クラスで一番モテたのは駆けっこが速いヤツだった。なるほど、動物(女性)の本能は正直だ。
生活習慣を整え、身体のメンテナンスを忘れずに。

誤解を恐れずに言うと、デキる男は臆病である。それは常に「もしも」を想定しているからだ。現状がどんなに順調であろうとも、いつでも頭の中に描いているのは最悪のシナリオ。だが、実はそんな不安や恐怖こそに自分を守る仕組みがあり、そこから事前の対策や準備が生まれてくる。さらに怖がりであれば、周囲の変化にもいち早く気づく。状況のわずかな違和感、人の表情の微かな動き。そうした小さな兆候を迅速に察知する能力によって、リスクは確実に回避されるのだ。いざ勝負という時、大胆かつ豪快に攻めるためにも、日常の些細な事には慎重でいたいものだ。
平時からリスクを想定し、予測と予防に努めよう。
リーダーにとって重要なのは、「何をしないか」を決断すること。すべての選択肢から最良のものを抽出し、他を捨て去る勇気が必要だ。不要なものを取り去ってあげれば、リソースは最適化する。さらに、伴うリスクから目を逸らさないという、責任に対する姿勢も信頼を生んでいくだろう。そんな男の最終的な意思決定には、確固たる覚悟とビジョンが息づいているものだ。
人生は決断の連続だ。だからこそ、仕事でもプライベートでも自分の中の優先順位を明確にしておくことが大切。不要なものは切る。決断のスピードは、そうやって上がっていく。
優先順位を明確にして、自分の判断基準を持とう。

「まったく、最近のオトコときたら…」「頼りがいのないヤツらだな…」そんなふうに苦々しく思ってしまうのは、年齢のせいなのか。確かに、社会の影響を受けて男性たちは変わった。ぐいぐいと力強く引っ張っていくような雰囲気は無く、いつも穏やかで、争うことを好まない。もちろん、時代の流れの中で女性たちも同様に変わってきた。男性に求めるものは強さではなく癒しであり、もはや「男らしさなんて有害」と感じている人々も多いと聞く。しかし、態度や振る舞いではなく、男性にとって「生物的に強い」ということは、とても大切なことだと思う。進化心理学や動物行動学の視点からも、健康な子孫を残す能力(生存力・繁殖力)は高い方がいいに決まっている。但し、前に述べたとおり時代は変わった。この現代において、生物的な強さとは単なる肉体の強さだけでは語れない。社会に適応し、人間関係を構築する「知的な強さ」こそ、重要なファクターであるといえるだろう。
さて、知性とは何か。結論から言えば、それは知識の積み重ねではない。肝心なのは自分の頭で「考える」ことだ。当然ながら、自らの思考力を育てるためには知識を得ることが不可欠である。読書をし、芸術を鑑賞し、人と語り合う。すべてが大切だ。しかし、そこから得た知識だけに頼っていると、逆に思考力は低下する。人間の力は知識の量によって決まるのではなく、自分で考える頭を持っているか否かだ。さあ、頭を自由にして、いろいろ考えようじゃないか。そこに、あなた本来の知性がある。
知識だけに頼らず、自らの思考力をはたらかせよう。

経験を積み、ある程度の苦労もしてきたと感じる頃、なんだかオジサンになってきたなと思う瞬間が日常に増える。そうなったらもうオジサン度は加速する一方であり、その法則には誰も抗えない。だが、大切なのは加齢と老化は違うということ。年齢が重なっていくことを悲観するのではなく、実はここから男っぷりが上がるのだと気づいてほしい。「今さら」ではない。「今から」なのだ。
中年になると、周囲に嫌われないようにしがちになるのは何故だろう。ダサくないかな? 臭ってないかな? 口やかましくないかな?でも考えてみてほしい。そうした気遣いは嫌われないためのものではなく、人として当たり前の行動ではないか。身なりを整え、清潔を保ち、親身に話を聞く。そんな姿勢があってはじめて人は人に受け入れられるのだ。だから加齢によって卑屈になってはいけない。日々淡々と、当たり前のことを当たり前に続けていけば必ず自己評価は高まる。そうやって生まれてくる自信を手中にできたなら、いよいよオジサンの出番だ。
落ち着きのある人、聞き上手な人、なんだか安心できる人。女性たちに素敵な男性の条件を聞くと、こんな答えが返ってくる。これらは若造には出せぬ味。もはや人生経験やそれなりの苦労を経てきたことが必須の“オジサン需要”ではないか!だが、次は「金銭的に余裕のある人」と続くらしい。いつの時代も 「男はつらいよ」なのである。
人として当たり前のことに、改めて時間をかけよう。


若い頃は、わかりやすい魅力に惹かれていたと思う。顔がかっこいいとか、背が高いとか、少し強引なくらいが好ましく思えたりとか。でも、いつからかわたしが惹かれる男の人の感じが変わっていた。
無理に話さなくても気まずくならないこと。こちらの話をちゃんと聞いてくれること。言葉の端々に、その人の考え方や人となりが感じられること。特に、考え方やものの見方に深さを感じたとき、その背景にある「時間や努力の積み重ね」がふと伝わってきて、惹かれる。
「余裕のある人」にも目が向く。お金の話だけではない。ちょっとしたことでイライラしない。思い通りにいかないときに感情をぶつけない。怖いものから逃げない。その人の「器」とも言うようなもの。余裕がある人は、人にも優しい。それから「誠実さ」。約束を守る。言っていることと行動が一致している。清く生きようとしている。ちゃんと向き合おうとしてくれる。ここぞというときに守ってくれる。肉体的な強さや、身なりの清潔さが不要なわけではないけれど、気づけば、静かにきちんとしている人のほうに心が向いている。
男の魅力とは何か。女性たちの言葉を辿ると、その答えは意外なところに置かれている。小さなことで動じない余裕。人の弱さを受け止める器。そして、一緒にいると、どこか安心できる空気。それは外見や言葉の巧さとは別にその人がどう生きてきたかという“質”が、静かに滲み出たものだ。雄(オス)であるからといって、力を誇示してはならない。強さと優しさを併せ持ち、周囲の人を守れる存在であること。そんな男に、人は惹かれる。だからこそ──雄(オス)であれ。