
認知症の予防は簡単ではないが、進行を緩やかにする方法はいくつか知られている。私には92歳の母がいるが、ありがたいことに元気に過ごしてくれている。ただ、話がくどい、繰り返す、脱線するという認知症の典型症状がみられる。短気な妹はいつも途中で怒り出すので、私が同じ話を聞く役割になる。その経験から、会話を続ける秘訣を編み出したので紹介する。
1.さえぎらない
2.せかさない
3.否定しない
4.内容より気持ちを受け止める
5.ひたすら相づちをうつ
6.返事は短く簡潔に
というものだ。一見回り道のようで、はじめは覚悟が必要であったが、結局時短で、しかもお互いの満足度が高いのではということに気づいた。一般に認知症の進行を抑える3大因子として、社会的交流(人と話すこと)、ストレス軽減(感情的に傷つかないこと)、適度な運動(ウォーキング程度)が挙げられる。上の秘訣はこの条件に合致している。

翻ってわれわれ社会人の日常会話はどうだろうか。相手の話をさえぎる、否定する、気持ちより細部の正しさにこだわる、自分の考えを長々とかぶせる。こうしたやり取りは珍しくない。これが繰り返されると、相手の思考力や判断力が鈍り、精神的に弱る認知パフォーマンスの低下、そして体調の悪化を招きかねない。こどもが学校や家庭で追い込まれるパターンも実はこれに近い。
そもそも、こうした他者を追い込む関わり方をしてしまう人自身も、自分の認知の偏りに気づけない一種の認知症状態なのかもしれない。強いストレスや不安の中にいる人ほどその傾向は強まるようである。だからこそ、自らを労わることができているのか、こころの健康状態を点検したり、相談したりしてほしいなと思っている。