
日本でしょうがといえば、冷ややっこや刺身などに添える薬味の印象が強い。だがタイでは、その立ち位置は少し異なる。スープにたっぷり入れたり、しょうがが主役の炒め物パット・キンも定番。肉や魚の臭み消しとしても日常的に使われ、台所に欠かせない存在である。
出産後の女性が必ず飲まされるともいわれる生姜湯は、母乳分泌を促す知恵として受け継がれてきた。また、白玉をしょうが湯に浮かべたブアロイナムキン、野菜たっぷりのゲーンリアンにもその辛味が生きる。インスタントの生姜湯はコンビニでも手に入り、体を内側から温める飲み物として広く親しまれている。
さらに注目したいのが、マッサージなどのリラクゼーションの場面での存在感である。ハーブを布で包んで蒸し当てるハーバルボールにはしょうがが配合されており、温熱とともに血行を促す役割を担う。産後に体を温める伝統療法ユーファイでも、しょうがは欠かせない素材のひとつだ。スパやマッサージの後に供される温かい一杯の生姜湯は、施術でゆるんだ体を内側から整え、巡りをやさしく後押しする。エアコンによる冷えやだるさを感じやすい体質にもしっかりと寄り添う。温め、巡らせ、余分なものを外へ出す。そんな役割を古くから担ってきたのが、しょうがなのである。
タイ料理にはしょうがに似たカー(ガランガル)もある。見た目はよく似ているが、香りはより軽やかで柑橘の清涼感を帯びる。トムヤムクンに欠かせないのはこのカー。一方、しょうがは土っぽく鋭い辛味で体を芯から温める。似て非なる二つの根茎。その違いが、タイの暮らしに奥行きを与えている。