
我が家の場合、結婚する時点で、これから5年以内に海外駐在がありますよ、行き先はバンコクになる可能性が高いですよ、と言われていた。そのため、育児休暇が明けると同時に駐在の打診があっても、驚きや、退職に伴うキャリアへの葛藤もなく、準備を進められたように思う。
しかしその過程で、「バンコクで不満はないけども、やっぱりニューヨークとかロンドン駐在とかの方が憧れるなあー」と言ったことがある。そうすると妻は鼻で笑って、「おぬしは現実をなにも分かっておらぬ。そんなところに行った日には家賃も生活費も高いし、あんたにもしっかりと働いてもらう必要がある。でなければ家計は火の車じゃ。」とおっしゃっていた。
言われた時はそんなもんかねーと思っていたが、最近ロンドンに住まう友人と話す機会があって、妻の正しさが証明されたので書いておきたい。彼女は集中治療医で、旦那は外資系金融に勤めるパワーカップル。子供は2人いて、旦那が現地の企業で働くことになりロンドンに移り住んだのだが、いわゆる日本からの駐在ではない。
まず通勤のことも考えてロンドン中心部で部屋を探すと家賃は100万円を超える。そして保育園の料金がなんと1日3万円、2人通わせるとなるとそれだけで月100万円を超える。両親ともにハードワークなのでベビーシッターもお願いするとそれも月100万円程度、それに毎月の食費などを合わせると、どう頑張っても毎月400万円以上の支出になるということである。
彼女としては異国のICUで苦労して働いているのに、給与が保育園代とシッター代に消えていくわけで、この度仕事を辞めて子どもとゆっくりすることにしたと報告があった。

バンコクでも物価が上がり、外食の勘定を円換算すると心が痛むわけであるが、保育園やシッター代は欧米ほど高くないわけで、育児のサポートを得つつ、仕事と家事をこなしていけるこの環境には感謝している。日本人としてはついついニューヨークの摩天楼やロンドンの石畳に憧れてしまうが、それら大都市には住みづらい時代になってしまったようである。恐るべしインフレ、恐るべし円安。そしてこのあたりの事情を正確に把握している妻には相変わらず頭があがりません。
聖路加国際病院救急部で勤務。2025年4月から妻のタイ駐在に帯同。趣味はテニス、三味線。