
日本とタイ。遠く離れた食文化に、共通して登場する食材がある。胡麻だ。その小さな一粒が両国の食卓に並ぶようになった背景には、長い旅の歴史がある。栽培の起源には諸説あるが、南アジアでは紀元前から食用油の原料として利用され、交易路を通じて東西へ伝わった。乾燥や暑さに強く、種は小さく運びやすい。保存が利き、油も採れることから、人の移動とともに各地へ広まった。中国や朝鮮半島を経て日本へ伝わり、やがて東南アジアにも広く定着した。
黒胡麻と白胡麻には、それぞれ異なる特徴がある。栄養構成に大差はないが、黒胡麻は種皮に色素やポリフェノールを含み、香りもやや力強い。一方、白胡麻は油分が多い傾向があり、まろやかな風味を生かして料理や菓子に幅広く使われる。タイでは黒胡麻をデザートや飲み物に、白胡麻を菓子やタレに用いるなど、料理に応じた工夫も見られる。加工方法によっても特徴は異なる。粒胡麻は食感と香ばしさを楽しめる。すり胡麻は香りが立ちやすく、栄養も取り入れやすい。練り胡麻は濃厚なコクがあり、日本料理の胡麻和えや胡麻豆腐などにもよく使われる。
胡麻には不飽和脂肪酸、たんぱく質、カルシウム、鉄、マグネシウム、食物繊維が含まれ、セサミンなどのゴマリグナンも特徴である。ただし高カロリーなので、目安は一日大さじ一杯ほど。毎日の料理に少しずつ取り入れるだけでも、胡麻の持ち味を無理なく生かすことができる。粒、すり、練り。それぞれの特徴を知って選べば、小さな一粒の力を、毎日の食卓で上手に生かすことができる。