
思い通りにならないことに対して不安や挫折感を抱くことがある。努力しても成果が出ないとき、先の見えない状況に直面したとき、自分ではどうすることもできない大きな出来事を目の当たりにしたときはなおさらである。私には今となっては笑うしかない経験がある。中学生の頃、「ノストラダムスの大予言」などの終末論が世間を騒がせていた。1999年に人類が滅亡するという衝撃的な話は、多感な少年だった私の心を揺さぶった。「どうせ世界が終わるなら将来を考えても無駄ではないか」、そんな虚無感に浸ったことを覚えている。当時はそれを根拠のないものとして受け流す力も経験も十分ではなかった。
それから半世紀が過ぎた今、世界は別の形で不安に満ちている。ウクライナで続く戦争、ガザ地区の深刻な人道危機、イランをめぐる緊張、そして国家指導者たちの予測不能な言動。遠い国の出来事とはいえ、日々のニュースは私たちの心に影響を与え、将来への不安を呼び起こす。

しかし、年齢を重ねる中で私が学んだことがある。それは、自分で変えられないことに心を奪われ続けると、無力感ばかりが大きくなるということである。世界情勢を個人の力で動かすことはできない。けれども、目の前の仕事、周囲への思いやり、家族との時間、地域への貢献など、自分の行動によって変えられることは数多くある。だからこそ、子どもたちには、自分で変えられることに力を注ぐ大切さを伝えたい。同時に、見聞きした情報を鵜呑みにしない姿勢も身に付けてほしい。現代は雑多な情報にさらされる時代である。その情報の根拠や発信者を確かめ、信頼に足りるのかを考える力が必要である。
大人の役割は、子どもたちが不安に飲まれないよう情報の背景や意味を丁寧に説明し、自分の努力で変えられることに目を向けさせることである。人生は思い通りにならないことの連続であるが、手の届く範囲のことを誠実に積み重ねる人は、きっと自らの道を切り開いていける。
大阪の高槻病院で長年小児・新生児医療の第一人者として臨床・研究・教育に携わる。サミティベート病院では医療相談やセミナーで邦人社会をサポート。現在は出張ベースで相談やセミナーを継続中。齢50にして長年の不摂生を猛反省、健康的生活に目覚めるも、しばしばリバウンドや激しすぎる運動で体を壊しがち。