
車椅子メーカー・MATSUNAGAは、利用する人の暮らしに目を向け、数多くの車椅子を開発してきた。追い求めてきたのは、「移動のための車椅子」にとどまらないものづくりだ。車椅子で過ごす時間を、より安全で快適にすることにも注力している。その際に同社が着目したのは、利用者の中に「座ること自体」が難しい人もいるという現実だった。身体が前へ滑る、上体が倒れる、左右へ傾く。こうした「不良座位」は、腰痛や転倒だけでなく、呼吸のしづらさや誤嚥などの原因にもなる。実際に、前かがみと正しい姿勢で水の飲みやすさを比べる「水飲み体験」も実施。

その背景には、車椅子は「生活するための環境」でもあるという考え方が息づいている。このような思想を形にした特徴の一つが、背もたれを利用者の体型に合わせて調整できる「背張り調整機能」だ。身体に合わない背もたれでは、前や横へ上体が傾きやすくなる。そこで開発過程では、人が車椅子に合わせるのではなく、車椅子を一人ひとりの体格や体形に合わせることを重視した。背中の出っ張った部分を後方へ逃がしながら、周囲を広く支えられるよう、背面の張り具合を細かく変えられる構造を採用。身体全体を面でサポートすることで局所的な負担を軽減し、自然な座位を保持する。

こうした考え方と機能性が評価され、MATSUNAGAの車椅子はサミティベート病院でも採用されている。移動だけでなく、待ち時間や診察中も負担の少ない姿勢を保つことは、患者の安全と快適さにつながる。快適に座れることこそが、その人らしい毎日。そんな「座ること」を支える新しい発想こそが、同社のものづくりの原点なのである。