
僕には育児の師匠がいて、その名をソーちゃんという。ソーちゃんは僕の研修医時代の後輩なのだが、フランス人と結婚し、早々に子どもが2人生まれてからは育児の色々を教えてくれる先生となった。
彼女の家に遊びに行ったときの衝撃は今でも忘れられない。夕方、1歳の子どもを寝室と思わしき部屋にぽんと置いて出てきて、庭でバーベキューの準備を始めたのだ。子どもは勝手に寝るから大丈夫、とのことであった。本当に寝てるのか、はたまたちゃんと息はしているのか、不安が盛りだくさんだったが、どうやらこれが日常のようである。

彼女の話では欧米諸国では生後間もなくから夫婦と子どもが別の部屋で寝ることが当たり前で、寝かしつけなしで入眠し、朝までぐっすりというのが通常らしい。これは最近日本でもフランス式のネントレとして紹介され、巷間に広まってきたが、子どもを静かで真っ暗な部屋で寝かせること、泣いてもすぐには駆けつけず様子をみることで、子どもが一人で入眠できるようにトレーニングし、それによって夜泣きもなくなるというものである。
親の寝かしつけが一般的な日本人からすると信じられないことだが、我が子は師匠の勧めに従ってネントレを遂行した結果、寝かしつけなし、夜泣きなしの親孝行ベビーとなった。しかし、そんな娘も1歳半を過ぎた頃、旅行で数日間添い寝をしたことをきっかけに寝かしつけ必要ベビーに突如として変貌してしまった!好きなぬいぐるみを持たせたり、ベッドの仕様を変えたりと色々試したのだが、万策尽きて今では一般の日本人家庭と同じ睡眠スタイルになっている。
先日、ソーちゃんにこの話をしたところ、彼女の家でも、上の子は保育園でお化けの話をされたことがきっかけで、下の子は気管支炎で入院したことがきっかけでセルフねんねができなくなったらしい。生後まもなくから習慣付けられたことであっても、病気、不安、環境変化など一人で寝られなくなる理由はやまほど潜んでいるのだ。実際自分事として考えてみても、病気で辛いときには側に誰かいてくれたほうが安心するし、一人腕枕で寝るよりは玉臂(ぎょくひ)に抱かれて眠りたいものなので、仕方がないことなのであろう。というわけで、僕は今日も寝かしつけを頑張ります。