痔とは?原因、症状、治療法

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このページでは、多くの人が経験する「痔」について、その症状、原因、種類、そして治療法を詳しく解説しています。特に、便秘や長時間の排便、偏った食生活などが主な原因として挙げられ、痔には内痔核と外痔核の二つのタイプがあること、そしてそれぞれの進行度に応じた治療法があることを説明しています。さらに、血便などの症状は痔だけでなく大腸がんなどの深刻な病気の可能性もあるため、自己判断せず専門医の診察を受けることが重要です。

便秘



「もしかして痔かも?」と感じたら。知っておきたい痔の症状、原因、病院での治療法

痔は、多くの方が経験する身近な病気です。しかし、おしりの近くにできるデリケートな部分の疾患であるため、誰にも相談できず、一人で悩みを抱え込んでしまう方も少なくありません。

もし、おしりに違和感や症状を感じたら、恥ずかしがらずに専門医に相談することが大切です。特に、血便は必ずしも痔だけが原因ではありません。この記事では、痔について詳しく解説し、どのような症状が出たら病院を受診すべきか、またどのような治療法があるのかをご紹介します。

痔とは?

痔とは、肛門周辺の血管が腫れたり、炎症を起こしたりしてできる病気です。肛門には多数の小さな血管があり、この血管が腫れたり炎症を起こしたりすることが原因で発生します 。

なぜ痔ができるの?主な原因

    痔ができる原因はさまざまですが、主なものとして以下が挙げられます。

    • 便秘や下痢、強くいきむこと:排便時に強くいきむことや、慢性的な便秘や下痢は、肛門周辺の血管に負担をかけ、腫れや炎症を引き起こす可能性があります。
    • 長時間トイレに座る:トイレで長時間、特に本を読んだり携帯電話を操作したりしながら座っていると、肛門周辺の血行が悪くなり、血管が拡張しやすくなります。
    • 食生活の偏り:食物繊維が不足し、肉類ばかりを食べていると便が硬くなりがちです。水分不足も便を乾燥させ、排便を困難にします。
    • 加齢:加齢により肛門の筋肉組織が緩むことも、痔ができやすくなる要因となります
    • 運動不足:運動不足は腸の働きを鈍らせ、便秘につながることがあります



    痔の種類

    痔は主に2つのタイプに分けられます。

    痔の種類

    1.内痔核 (Internal hemorrhoids) 

    直腸の内側にできるタイプで、通常は外からは見えにくく、手で触れても分かりにくいことが多いです。診断には大腸内視鏡検査が必要になる場合があります。

    大きさによって4つの段階に分類されます 。

    • ステージ1: 小さく、排便時にも肛門から出てきません。出血を伴うことがあります 。
    • ステージ2: 排便時に肛門から外に出ますが、排便が終わると自然に戻ります。鮮やかな赤色の出血を伴うことが多いです 。
    • ステージ3: 排便時に肛門から外に出て、指で押し込まないと戻りません。頻繁に出血し、強い刺激を感じることがあります 。
    • ステージ4: 常に肛門から飛び出したままで、押し込んでも戻りません。日常生活に支障をきたすほどの強い痛みを伴う可能性があります 。



    2.外痔核 (External hemorrhoids) 

    肛門の外側の皮膚の下にある血管が腫れるタイプです。外から見たり触ったりして確認できます。炎症を起こすと痛みが強くなる傾向があります。内痔核と外痔核が同時に発生することも少なくありません 。

    痔の主な症状

    痔の症状はタイプや重症度によって異なりますが、一般的な症状には以下があります。

    • 肛門周辺の腫れ、赤み、かゆみ
    • 出血: 排便中や後に鮮血がポタポタ落ちる、または拭いた紙に付くなど 。暗赤色や黒っぽい血の場合もあります
    • 痛み: 特に外痔核で炎症が強い場合や、血栓ができた場合に痛みが強くなります
    • 肛門周辺にしこりや硬い組織ができる
    • 排便困難
    • 肛門周辺からの黄色い分泌物(膿)や出血

    これらの症状、特に痛みや分泌物(膿)は、痔瘻(じろう)の症状と似ている場合があります 。
     

    要注意!その症状、痔だけじゃないかも?他の疾患との鑑別

    血便や肛門周辺の症状がある場合、それが必ずしも痔であるとは限りません 。特に、以下のような疾患でも同様の症状が見られることがあります。

    • 感染性大腸炎: 通常、下痢や水様便、腹痛、発熱を伴います。
    • 消化管出血: 上部消化管出血では黒いタール便、下部消化管出血では鮮血が便に混ざることがあります。
    • 大腸ポリープ: 血便が一時的に現れたり消えたりすることがあります。一部のポリープはがん化する可能性があります。
    • 大腸がん: 初期には症状がないこともありますが、進行すると便秘と下痢の繰り返し、血便、貧血、腹痛などの症状が現れることがあります。

    特に、痔と大腸がんの症状は似ていることがあるため、正確な診断を受けることが非常に重要です。若年層でも大腸がんは発生するため、高齢者だけでなく若い方も注意が必要です。

    以下のような症状がある場合は、できるだけ早く専門医の診察を受けてください。

    • 暗い色の血と共に白い粘液が排出される。
    • 貧血の症状がある。
    • 排便が頻繁になったり、逆に頻度が低くなったり、または出し切れていない感じがする。
    • 肛門に持続的な痛みがある。
    • 便秘と下痢を繰り返す。
    • 便のサイズが継続的に小さくなっている。
    • 原因不明の体重減少。
    • 大腸がんの家族歴がある。
    • 痛みや膿の排出が数日続く。
    • 排便時に異常に強い痛みがある。
    • 肛門周辺に膿瘍からの血液や膿の排出が断続的にある。
    • 肛門周辺の皮膚に炎症、痛み、腫れ、赤み、熱感がある。
    • これらの症状があり、改善しない、あるいは悪化している場合 

    痔の診断方法

    専門医は、まず患者さんの症状や病歴を詳しく聞き取ります。次に、肛門周辺の皮膚の状態を視診・触診し、赤み、膿、出血などを確認します。内痔核の場合、大腸内視鏡検査が必要となることがあります。特に、他の深刻な疾患(大腸ポリープやがんなど)の可能性を除外するために、大腸内視鏡検査が推奨される場合があります。複雑な痔瘻が疑われる場合や、病変が見つけにくい場合には、MRI検査がより詳細な情報を提供し、正確な治療計画を立てるのに役立ちます。

    痔の治療法

    痔の治療法は、症状や重症度、痔のタイプによって異なります。

    1. 1.生活習慣の改善とセルフケア

    軽度の場合や、再発予防のために非常に重要です。

    水分補給

    • 食生活: 食物繊維を多く含む果物や野菜を十分に摂り、便秘を防ぎましょう。
    • 水分補給: 1日コップ8杯以上の水を飲み、便が硬く乾燥するのを防ぎましょう。カフェインやアルコールは脱水を招くため避けましょう。
    • 規則的な排便: 毎日決まった時間にトイレに行く習慣をつけましょう。便意を感じたら我慢せず、すぐにトイレに行きましょう。
    • 適切な時間で排便: トイレに座る時間を短くしましょう。スマートフォンや読書をしながら長時間トイレにこもるのは避けましょう。
    • 適度な運動: 定期的な運動は腸の動きを助け、排便をスムーズにします。
    • 清潔にする: 排便後は、乾いたトイレットペーパーで強く拭くのではなく、ウォシュレットを使用したり、湿ったティッシュを使ったりして優しく清潔に保ちましょう。石鹸は刺激になる場合があるため、肛門周辺には使用しない方が良いでしょう。
    • 温浴: 症状が強く出ているときは、1日に数回、10~15分間、温かいお湯で肛門周辺を温めると痛みが和らぐことがあります。シットバス(専用の座浴器)

    病院での治療法

    症状が重い場合や、セルフケアで改善しない場合は、医師による治療が必要です。治療には、薬物療法、非外科的処置、手術療法があります。

    • 薬物療法 (保存的治療):

    ・症状を和らげるために、軟膏や坐薬が処方されることがあります。内痔核には坐薬が効果的ですが、外痔核には使用できません 。

    • 非外科的処置:

    ・注射療法 (硬化療法): 痔核に化学溶液を注入して小さくする方法です。比較的痛みが少なく、外来で行えます。

    ・ゴム輪結紮術 (Rubber band ligation): 内痔核の根元に小さなゴムバンドをかけて血流を遮断し、痔核を壊死させて脱落させる方法です。専門医の管理下で行われるべきで、感染などのリスクに注意が必要です。抗凝固剤を服用している患者さんには適用できません。

    手術療法:

    外痔核や進行した内痔核(ステージ3、4)に適しています。手術の原則は、痔核を完全に取り除き、再発を防ぎ、同時に肛門括約筋を保護することです。括約筋を傷つけると、便失禁につながる可能性があるためです。手術方法の選択には専門医のスキルが非常に重要です。

    ◦痔核切除術 (Hemorrhoidectomy):

    問題のある大きな痔核を切除する方法です。再発率は低いですが、術後の痛みを伴うことがあります。

    ◦スタップラーによる痔核手術 (Stapled hemorrhoidopexy):

    主に大きすぎない内痔核に用いられます。ただし、内外痔核を合併している場合には不向きなことがあります。

     

    ◦レーザー治療 (Laser):

    比較的軽症の痔核に用いられ、レーザーで痔核組織を焼灼します。比較的新しい方法ですが、コストが高い割に注射療法と効果に大きな差がなく、長期的な再発率も高いという指摘もあります。

    ◦ドップラーガイド下痔動脈結紮術 (Doppler-guided hemorrhoid artery ligation):

    小さな内痔核に用いられ、超音波で痔核に流れ込む血管を探し、結紮して血流を遮断する方法です。痔核自体は切除しません 。

     

    痔瘻(じろう)とは?痔と似ているが異なる病気

    痔瘻は、肛門周囲膿瘍が慢性化した結果として発生することが多い病気です。肛門周囲膿瘍は、肛門腺(肛門管にある分泌腺)が詰まり、細菌感染を起こして膿がたまった状態です。この膿瘍が皮膚を破って外に出口を作り、肛門管の内部の開口部と外部の皮膚の開口部を結ぶトンネル(瘻管)ができたものが痔瘻です。

    痔瘻の症状には、肛門周辺の痛み、腫れ、赤み、熱感に加え、膿や粘液、血液の排出などがあります。これらの症状は痔と似ていますが 、痔瘻は自然に治ることはなく、再発を防ぎ、完治させるためには手術が必要です。痔瘻の手術は、肛門括約筋に関わるため、便失禁を防ぐためにも専門的な知識と経験を持つ医師による執刀が非常に重要です 。

    どんな時に専門医に相談すべき?

        前述の「要注意!痔以外の病気の可能性も」の項で挙げた症状や、痛み、膿の排出など、気になる症状がある場合は、早めに専門医の診察を受けることを強くお勧めします。早期に正確な診断を受けることで、適切な治療が迅速に行われ、予後も良くなります。

        消化器系、特に肛門疾患の専門医に相談を

        肛門周辺の疾患はデリケートであり、痔や痔瘻の治療、特に手術には専門的な知識と経験が求められます。適切な診断と治療を受けるためには、大腸肛門外科を専門とする医師に相談することが望ましいでしょう。当院には消化器系、特に大腸肛門外科分野に専門性を持つ医師が在籍しており、複雑な痔瘻手術におけるLIFTS法など、先進的な技術にも対応しています。これらの分野で豊富な手術経験を持ち、疾患のあらゆる側面を深く理解しているため、患者さん一人ひとりに最も適した効率的な治療計画を作成することができます。

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          流れ・治療期間・費用について

          手術当日の流れ

          手術当日の流れを詳しく説明しています。
          大腸内視鏡検査・痔の手術を受ける方へ



          費用

          手術をする場合の2泊3日の入院費用

          108,500バーツ~

          ※費用は事前の予告なく変更することがあります。

          治療期間

          症状によって違いますが、最短の場合は以下通りです。
          外来:初診
          入院:症状によりますが、最短1泊2日
          外来:退院してから1週間後の再診

          土、日、祝も手術可能です。

              外科(タイ・バンコク)

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              監修者情報

              尾﨑 岳  (おざき たかし) 医師

              サミティベート病院 医療コーディネーティングドクター

              消化器外科専門医・指導医。がん治療認定医、関西医科大学医学部非常勤講師。関西医科大学消化器外科および大阪府済生会泉尾病院を経て来タイ。当院では入院患者さんの訪室、無料の医療相談、またご希望があれば外来時の説明や手術前の相談など幅広く日本人患者をサポート。趣味はロードバイク。実用タイ語4級取得。

               

              ・在院スケジュール

                        火曜日~土曜日          7:00-17:00

              医療相談 (詳細は下記をクリックしてください

                          火・木・土                 9:00-16:00

               

              日本人医師による無料医療相談

              参考文献

              Excerpts from "Anal Fistula - Symptoms, Diagnosis and Treatment"

              Excerpts from "Blood in Stool Treatment in Bangkok | Causes, Symptoms, and Treatment Options"

              Excerpts from "Hemorrhoids - Prevention and treatment | Samitivej Hospital, Bangkok"

              Excerpts from "The LIFTS Technique for Fistula-in-Ano"

              Excerpts from "What Do Hemorrhoids Mean for Your Health?"

              Excerpts from the transcript of the video "รู้จักกับนพ. ภัคพงศ์ วัฒนโอฬาร ศัลยแพทย์ผ่าตัดส่องกล้อง (ผ่าตัดแผลเล็ก) โรคระบบทางเดินอาหารและลำไส้"




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