バンコクのPM2.5(大気汚染)について知っておきたいこと

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バンコクのPM2.5(大気汚染)について知っておきたいこと

2024年7月22日更新

ここ数日続く、バンコク首都圏の微小粒子状物質(PM2.5)濃度の上昇。小さな粒子ですが健康への大きな影響があります。この記事にPM2.5についてまとめました。



どのくらいの濃度が人体に害を与えるのか?

世界保健機関(WHO)や世界各国ではそれぞれ、PM2.5が一定の基準値を超えると健康に害を与えるレベルと設定しています。タイにおいては下記の通りです。

微小粒子状物質(PM2.5)の基準値(μg = マイクログラム)

  • タイ:50 μg /3(AQI=125以下)
  • 世界保健機関(WHO):25 μg /m3

いずれの基準を採用するにしても、バンコク首都圏では連日、PM2.5の数値レベルは1日平均で100 μg /㎥近くまで達し、危険なレベルにあります。交通量の激しい道路沿いや建設現場の近くでは、特に高い数値が検出されています。

PM2.5はどうして人体に悪い?

PM2.5は、粒子の大きさが非常に小さいため、人体に取り込まれやすいため注意が必要です。下記に様々な物質の大きさを示します。(μm = マイクロメートル。1mm = 1000μm)

  • イエダニ 600~1000μm
  • ヒトの髪(直径) 70 μm
  • スギ花粉 20~40μm
  • カビ 2~10μm
  • 細菌 0.5~5μm
  • PM2.5 2.5μm以下

PM2.5の粒子はスギ花粉や細菌よりもずっと小さいということが分かります。ある程度の大きさの物質であれば、鼻や喉の粘膜さらに鼻毛によって体内への侵入が防がれますがPM2.5は非常に微細な物質であるため、人間の身体の機能では侵入が防げず、肺の奥深くにまで入り込みやすいのです。さらに問題なのがPM2.5は人体に有害な物質だと言うことです。

PM2.5濃度は何によって悪化するのか?

PM2.5

PM2.5は、使用年数に関わらず、エンジン付き車両、特に自動車の燃料を燃焼させることで排出されます。よって、PM2.5のレベルが高くなる時間帯は、朝と夕方のラッシュアワーで、かつ乾季の時期に危険値に達する傾向があります。

これは、乾季の間は、風が吹いたり、雨が降ることが少なく、また、高層ビルが立ち並ぶバンコクでは、風の通り道が遮られるため粉塵が地表に滞留しているからです。さらに、バンコク中のおびただしい数の建設現場から出る粉塵が、大気汚染を悪化させているもう一つの原因となっています。

PM2.5の健康へのリスク

PM2.5粉塵はその小ささゆえ、気管支や肺に簡単に入り込み、下記のようなリスクを引き起こす可能性があります。

  • 呼吸器リスク
    大気汚染、中でもPM2.5は喘息、肺炎等のリスクを高めます。適切な予防策が取られないと、長期に渡る粉塵蓄積により、肺がんの発症の可能性もあり得ます。
  • 循環器へのリスク
    長期に渡る粒子状物質の吸入により、静脈と動脈内に分泌物が堆積され、心臓発作や虚血性脳卒中を引き起こす可能性があります。さらに、大気汚染にさらされると、心筋細胞へ影響が出て、不整脈や心臓病を引き起こす原因ともなり得ます。
  • 脳へのリスク
    粒子状物質は血流へ入り込むほど微小です。蓄積されると、高血圧と血液粘度の上昇の原因となり、脳の血栓症のリスクが増します。さらに、脳血管が硬くなり、障害や麻痺、死に至る場合もある虚血性脳卒中や脳出血を生じるリスクが高まります。

特に注意をすべき人

個々の健康状態や体力にもよりますが、大気汚染に対してしっかりした予防策を取らなければ、バンコク首都圏に住む全ての人々が危険な状況に置かれています。さらに小児、妊婦、高齢者、持病がある人は、体調に応じて、より慎重に行動しましょう。

幼児

年齢が低いほど、危険性が高まります。小児は免疫システムが成人ほど強くなく、さまざまな臓器は発育の途中にあります。よって呼吸器系や循環器系に入り込む大気汚染物質は、体の多くの組織の成長を抑制し、深刻な疾病や障害を引き起こす可能性があります。

妊婦

大気汚染物質に直接さらされる母親に危険が及ぶばかりでなく、お腹の中の胎児にも危険が及びます。学術研究により大気汚染は早産、流産、子宮内での死亡の危険性を高めることが明らかにされています。

高齢者

年齢を重ねると、体のさまざまな機能が衰えるのに伴い、免疫システムも衰えていきます。高齢者が大気汚染にさらされると、心臓血管疾患や喘息のリスクが高まります。特に持病がある高齢者が大気汚染から受けるリスクは高く、配慮が必要です。

入院患者と持病がある患者

呼吸器疾患、肺疾患、さまざまな心血管疾患の患者は、高レベルの大気汚染にさらされると、直接体の症状に影響を与えてしまうため、特にリスクが高まり、致命的になる可能性もあります。



PM2.5から体を守るために

PM2.5濃度の確認をする

IQAir Air Visual、Real-time Air Quality Index (AQI)、などのアプリやウェブサイトを活用して大気汚染状況速報を確認しましょう。日本語では、こちらのサイトでバンコクのリアルタイム大気質指標が見られます。

マスクの着用をする

N95マスク

N95マスク

PM2.5の微粒子の吸入を防ぐためには、インフルエンザや花粉症対策などで使用する一般用マスク(不織布マスクなど)でなく、医療用や産業用の高性能な防じんマスク(米国の規格に基づいて認定されたN95以上の規格のマスク・防護率95%以上のN95マスクや防護率99%以上のN99マスクなど)の着用が必要です。

なお、これらの微小粒子の捕集効率の高いフィルターを用いたマスクは、顔の大きさに合ったものを、空気が漏れないように、使用方法に従って正しく着用して下さい。マスクをしっかりと顔面にフィットするように着用すると、粒子状物質を除去する効果が高まります。また、一回使用したマスクは、粉塵が溜まっているため、再利用せずに破棄して下さい。

外出をできるだけ控える

不要不急の外出は避けるようにしましょう。特に、PM2.5濃度が高い日は、屋外でのいかなる運動も中止して下さい。激しい運動や深呼吸によって、微小粒子状物質が呼吸器系や肺へ入り込む量が多くなります。

屋内では外気を遮断する

外気を遮断した住宅や建物の中で過ごすようにしましょう。気温が低い日もエアコンを使用して、空気が悪い時期は窓やドアを密閉するようにしましょう。また、空気中の微小粒子状物質を除去するために、高性能の空気清浄機を使用するのも良いでしょう。

禁煙する

喫煙は呼吸器系を衰弱させ、大気汚染に加えさらに体へ悪影響を及ぼすことになります。喘息や肺がんのリスクを減らすため、この際、禁煙しましょう。

体調を整える

持病があり、常に治療を受けている人は、主治医に適切なアドバイスを受けるなど、特に注意する必要があります。

PM2.5は目には見えませんが、健康に悪影響を与えるに十分なほどバンコク首都圏の空気は悪化しています!状況に応じて自分を守るようにしましょう。呼吸がしにくい、目がチクチク痛い、疲れやすい、長引くひどい咳などの症状がある場合は、病院にかかり適切な治療を受けましょう。


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子どもとPM2.5について寄せられた質問に、小児科医の南先生がお答え

南 宏尚 先生(社会医療法人愛仁会高槻病院)

小児科・新生児科専門医。4年間のタイ駐在で邦人社会をサポート。2023年度からは出張で医療相談やセミナーで継続支援。プライベートでは精神力の限界に挑戦する様々なスポーツを楽しむアウトドア派。

 

PM2.5の数値が高い日もありますが、子どもが外遊びをしたがる&マスクをつけてもすぐに外してしまうので、どのくらいの数値以上だと外遊びを控えた方が良いか、何分以内なら外遊びが許容範囲か、など目安を知りたいです。

PM2.5などの大気汚染物質は、頭痛、喉の違和感、喘息発作のような短期的な影響と、肺や心臓の病気のような長期的影響を及ぼしますが、研究でよくわかっているのは長期的な影響のほうです。平均濃度が10上がると、心臓病が1.2倍になるといった指標で、高ければ高いほど危険ということはわかっていますが、逆にいくらまでなら安全という線引きはないのです。ですので、日本の環境省は望ましい基準値を1日平均35μg/m3以下(AQI*では70以下)とし、その倍の70μg/m3以上(同150以上)で注意喚起という暫定的な数値を提示しています。つまり、1日中AQIが150を超えているような日は、元気な人にとっても有害なので外での運動は控えましょうという意味です。4歳までの小さなお子さんでは、PM2.5によって気管支や肺の成長が停滞してしまう恐れがあるので、例えば普通の外出ならAQI150未満、走り回るなどの運動は100未満の時間帯を選ぶなど、大人よりも厳しい捉え方をしたほうが良いかもしれません。

 

今まで喘息などは特になかったのですが、タイでの生活が始まってすぐに咳をするようになり、だんだん悪化して痰が絡む咳をするようになりました。窓を閉めて過ごし持ち合わせの薬を与え、数日したら良くなりました。これからタイで生活するにあたり注意することや対策がありましたら教えてください。

ご存じの通り、タイは日本よりPM2.5が高い国です。特に乾季の1月から2月にかけてはAQIが150や200という極端に高い状態になりやすいです。曜日や時間帯で明らかな変動がありますので、外出はAQIが低い時間帯を選ぶといった注意が必要です。とはいえ、過度の自粛は咳や頭痛などの心因性の体調不良や、成人病の悪化を誘発しますから、公園散策を楽しむなどできるだけ開放的、健康的な雰囲気を心がけてください。ご自宅の窓は定期的に開けて換気した上で、エアクリーナーで大気汚染の影響を軽減されるようお勧めします。

 

最近のPM2.5の影響か、5歳の息子が鼻水を結構出すのですが、市販の薬を飲ませても良いのでしょうか? アレルギー性鼻炎等ではあまり薬を飲まさない方がいいのでしょうか? 空気が良い日は鼻水は出ないので、空気の影響だと考えています。薬はdimetappを以前飲んだらおさまったので購入しました。鼻水だけなので、受診すべきかどうか迷っています。

鼻水がなぜ出るのかを考えますと、鼻水と一緒に体の外に出すべきものがあるからで、それは何かと言えば、PM2.5であり、花粉、ハウスダスト、ウイルスなのです。ということは、鼻水が出ている時に鼻水を止めようとする企ては、体の自然な反応を邪魔するのであまり良くないということになります。ですので、鼻を出しやすい状態にサラサラにしようと、去痰薬のカルボシステインを使うのはアリだと思います。

とは言え、鼻水の量が多すぎて、日常生活や睡眠に影響するようでしたら、抗ヒスタミン薬を使うしかないと思います。dimetappは抗ヒスタミン薬の中では結構強い作用があり、1歳未満のお子さんには使えないですが、5歳ということであれば眠気の副作用に注意しながら使われても結構です。鼻や咳がもし長引くようなら、薬のさじ加減を病院で調節してもらう必要がありますが、とりあえずということであれば、手持ちの薬で効果をみてください。お子さんが辛いようであれば、受診をオススメします。

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